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借りと貸し  NO 3321

 大阪のラマダホテルが今年いっぱいで閉業するニュースがあった。元は東洋ホテルで大阪万博開催の前年にオープン、私が22歳の時だった。

 この仕事に従事してから合同葬やお二人ご一緒というお葬式も何度か担当させていただいたが、初めてご夫妻のご本葬儀を担当した時の辛労は忘れられないほど強烈な記憶として残っており、無事に済んだことに対して自分への慰めみたいに食事に行ったのが東洋ホテルのレストランだった。

 当時は、ロイヤルホテル、プラザホテルと共に大阪を代表するホテルとしての存在であり、会合などでも何度か利用しただけに懐かしい。

 さて、前述のご夫妻のお葬式だが、ご高齢でお二人共同じ病院にご入院されており、ご主人がご逝去されて密葬義を担当。約一ヶ月後に社葬本葬儀を予定されていたら、中陰の間に奥様がご逝去、密葬義を終えてお二人ご一緒の本葬儀となった出来事だった。

 大きなご遺影を準備するにあたって、男性と女性はどちらを上席に考えるかの左右問題で悩み、仏式、神式、レディーファーストということなどで苦しんでいたら、「そうだった!」という誰もが納得される結論に至った。それは、お二人のお写真を正面ではなく斜め前方から撮影されたように制作すること。そしてどちらも内向きになるように並べればよい訳で、背中合わせならおかしいということを考えたからであった。

 多くの会葬者が参列されたので大変だったが、ご祭壇に飾られたご夫婦お二人のお写真をご覧になった方々が驚かれていた。なぜなら社葬本葬儀のご通知をされたのは会長さんだけになっていたからだ。

 葬儀委員長を務められた方がご挨拶の中で経緯に触れられたが、その中で深いご夫婦の絆を感じていますと仰られた言葉に皆さんが頷かれていたのが印象に残っている。

 その後、何度かお二人のケースを担当したが、ある事故の被害者となられた会社の役員さんお二人の男性の本葬儀のこともはっきりと記憶している。

 振り返れば本当に多くの方々のお葬式を担当させていただいたものだ。昔はご自宅で執り行われたことが大半で、商店街や町を歩いていると思い出すことも多く、前を通りながら心の中で手を合わせている。

 ネットニュースの中に目が留まった記事があった。それは「個人情報」ならぬ「故人情報」という問題で、ブログを発信されていた人物や管理人の方が急逝されたケースで浮上するという指摘で、コメント欄が様々な書き込みで荒らされており、中にはウイルスを仕掛けたものも存在するという事実だった。

 このコラムのブログや「独り言」のページでは返信やコメントのシステムを設けていないが、それは自分がいつこの世から出立してしまうか不明だからで、この記事を読んで自身の行動がそれでよかったように思っている。

 ネット社会で批判をされるのは仕方がない考え方も必要で、過日に炎上した官僚のブログや、亡くなってしまった岩手県の県会議員のブログもその内容が引き金になったようだが、自分より弱い立場の人を攻撃するのは避けるべきで、権力を笠に着る政治家や経営者だけを対象にしたいものである。

 病院で番号によって呼ばれたことに立腹されたことが発端だったみたいだが、個人情報の観点からすると現在では当たり前のことだし、氏がもしも過去の「独り言」をご笑覧くださっていたら、きっと怒りを表さなかったと思って残念である。

 過去に病院でCTスキャンを受けたら、造影剤が全て漏れてしまって大変な目に遭ったことを紹介し、医師や看護師さんが平身低頭謝罪される姿に対し、どうしたら早く治るかだけを考えて欲しいと伝え、一切怒りを表さなかった出来事を書いたら、「信じられない」とのメールを頂戴し、「借りを作る」のではなく「貸し作る」人生になったきっかけとして、友人である音響会社の社長が体験したベンチャーズのハプニングについて書いたら皆さんが納得してくれた。

 彼がベンチャーズの日本公演の音響を担当していたら、メンバーの表情に異変が感じられ、すぐにそれがモニターの不具合発生ということに気付いたそうだが、メンバーは客席側だけに流れる音響だけで演奏を続け、やがてアンコール曲に応えて緞帳が降りたそうだ。

 通訳を伴って控室に謝罪に訪れた友人だが、平身低頭する彼に対してベンチャーズのリーダーは、次のような言葉を掛けたのである。

「君は謝罪する必要はない。あれは機材の不具合。だから機材が謝ればよい」

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