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式場での言葉  NO 3511

地方で行われたご仏縁のあった人の葬儀に参列した時のこと。司会者が開式を告げる前の言葉の中で、「またお忙しい中」というのを耳にしたのでびっくり。「また」は結婚、葬儀の両方で禁句となっている基本的常識である。

やがて遺族と親族の焼香が始まったが、親族の中で済んでいない人を確認するのに女性スタッフが参列者に向かって大きな声で次のように言ったのでびっくり。

「ご焼香のお済みでないご親族の方はおられませんか?皆様はご一般様でしょうか?」

私は、この「一般」という言葉が大嫌いである。受付の場所に「一般受付」と表記されていても気分が悪くなるし、サービス業では使用するべき言葉ではないと考えている。

会社関係、地域関係、官公署関係、得意先関係、仕入先関係などに区分けするのは問題ないが、その他大勢みたいに「一般」でまとめられることには抵抗感を抱いてしまう。単に「ご弔問」や「ご会葬」受付としておく方が無難だろう。

葬儀の司会者の中で考えられない言葉を発する人もいる。「本日はご多数のご会葬ですのでご焼香は1回でお願いします」なんて懇願型トークだが、宗派を重視するプロならそんな愚かな発言をすることは絶対にないことを伝えたい。

「ご当家は神式で執り行われておりますので、お手持ちの数珠はポケットかッバッグにお収めください」

そんなアナウンスを聞いたこともあったが、参列者の宗教は自由で、強制を要望するコメントはおかしいと考えたい。

葬儀にあって仏教なら「焼香」、神式なら「玉串奉奠」、クリスチャンなら「献花」が行われるが、手を合わす際にはご自身の信仰される宗教作法に則ることもあり、それを強制するのもおかしなことである。

暑い中、寒い中を大勢の参列者が列を成している。中には高齢の方々もありなるべく早くして差し上げたいのも心情だが、早くして欲しいと伝わるようなニュアンスが感じられるコメントを一流は絶対にすることはなく、あらかじめ想定しておいて焼香用具のセッティングを増やす備えも大切である。

物理的に焼香台を増やせないケースもあるが、そんな場合はどうするかを開式前にスタッフと打ち合わせしておくことがプロスタッフの対応である。