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供養塔のこと  NO 3381

 昔、墓相学の大家と称される人物の講演を受講したことがあった。その中で印象に残っているのが「八墓」形式で、一仏一基を基本とし、面積は間口4メートル、奥行き3メートルの12平方メートルで、奥の列に4基の墓が可能で、手前の列にも4基建てられ、両方合わせて8基というものだった。

 本家と分家の墓地は別になるのは常識的に知られているが、敷地が隣接していても境界を表す縁石などで区分けされるのが普通で、昔の旧家では、長男以外の子供が結婚して初代の分家になる際、親が家の伝統の3つを分け与えたとも言われている。

「仏壇」「神棚」「墓地」だが、前述の「八墓」が可能な敷地を理想とし、右奥に本人、その隣に伴侶、その隣に長男、その隣に長男の伴侶となり、前列の右端には本人からすると孫ということになり、三代続くと結構年数が経っていることになり、右奥に合葬形式の象徴である供養塔として「五輪塔」を建立するというものであった。

 墓には「**家の墓」や「**家先祖代々」という合葬形式も多いが、遠い昔に夫婦墓が存在していた歴史もあり、最近のお墓に関する意識変化を見ていると、我が国の伝統や文化が大きく変貌しつつあることを感じている。

 テレビ局のアンケート調査で、夫の実家の墓に入りたくない女性が想像以上に多く、自分の実家の墓に入りたいと考える人も少なくなかったのでびっくりした。

 五輪塔が出て来たところで少し説教的なことに触れておくが、高僧が遷化されると通知状などに「四大不調のみぎり」なんて言葉が冒頭に書かれていることがあり、この「四大」にもう一つ加えると「五大」になり、「空・風・火・水・地」を表し、生あるものが地に宿って地に還ることを説く文字で、それらの梵字が五輪塔に刻まれている。

 生まれて来る時、「水」とは「水子」というように母の胎内を表し、「火」は熱を意味し、「風」は呼吸となり、「空」という意識を有するようになって人となり、亡くなる時はその逆に、意識がなくなり、呼吸が止まり、冷たくなって水になって地に還るということになるようだ。

 風・水・火・地の文字それぞれに「葬」を付ければ「風葬」「水葬」「火葬」「埋葬」という四大葬法となるので興味深いが、仏教には「六大」という言葉があるので書物でお調べいただけたら幸いである。